非公開会社との取引の留意点
会社外部の取引先との取引管理の点においても、新会社法施行に伴い、留意すべき点が多くあります。
新会社法施行後、会社内部においては定款変更・株主総会準備等の実務対応が進んでいます。会社外部の取引先との取引管理の点においても、新会社法施行に伴い、留意すべき点が多くあります。
非公開会社である中堅・中小企業と取引する場合の留意点及び債権者の情報収集の方法について説明致します。
非公開会社と取引する場合のポイント
新会社法では、株式会社の機関設計が柔軟になりましたので、非公開会社と取引する場合、取引先がどのような機関設計を選択しているのか、また、取引内容に応じて、いかなる社内の承認手続きが必要であるかを確認する必要があります。
取締役会の有無を確認
新会社法では、会社が選択した機関の設置はいずれも登記事項となります。取締役会の有無により、取締役会決議の要否が取引先の商業登記簿謄本・登記事項証明書を確認して取締役会の設置の有無を確認する必要があります。登記簿上に「取締役会設置会社」の表示がある場合には、取締役会設置会社であり、その表示がない場合には、取締役会非設置会社であると判別できます。
社内の承認手続きを確認
<1>取締役会設置会社
重要な財産の処分及び譲受け(例:会社の不動産に抵当権の設定を受ける場合)や利益相反取引(子会社と取引し、親会社保証を徴求する場合、取締役と取引し会社から保証を徴求する場合)は、取締役会決議事項となりますので、確認資料として、取締役会議事録の写しを徴求することが望ましいといえます。
<2>取締役会非設置会社
取締役会非設置会社では、決議権限が全ての事項に及びますが、当然に株主総会決議事項になるわけではなく、株主総会が決議することも意味になります。写しを決議事項になっている場合は、なりますが、定款に定める以外の事項についても、株主総会決議事項とすることが注意が必要です。
株主総会決議事項ではなく、取締役の判断に任せられている場合は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数で決定することになりますので、取締役の同意を得た旨の書面を徴求することが望ましいでしょう。
債権者の情報収集の方法
(ⅰ)定款
債権者は、会社の営業時間内は、いつでも定款の閲覧、謄本・抄本の交付の請求ができます。旧法の下での定款は、整備法によって、新会社法に基づく定款とみなされます。更に、機関、株式等の一定事項については、施行前の実態を反映した内容の定款の定めがあるものとみなされます。みなし事項については、定款に反映されていない可能性がありますので留意する必要があります。
(ⅱ)商業登記簿
新会社法では、株主総会・取締役以外の会社が選択した機関の設置はいずれも登記事項となり、従来より多くの情報が、登記簿に記載されることになります。
なお、監査役の権限を定款で会計監査権限に限定している場合でも、「監査役設置会社」として登記されているため、登記簿上では、監査役の権限が限定されているのか否かは判らないことに留意する必要があります。
(ⅲ)株主総会議事録
債権者は、会社の営業時間内は、いつでも株主総会議事録の閲覧・謄写の請求ができます。
新会社法では、株主総会が開催される場合、株主総会議事録への取締役・監査役の署名は廃止されました。
従来は、署名があることで、議事録は適法に作成されたとの推定が働きましたが、今後は簡単に偽造されるリスクがありますので留意する必要があります。
(ⅳ)株主名簿
債権者は、営業時間内は、いつでも請求理由を明らかにした上で、株主名簿の閲覧や謄写の請求ができます。もっとも、会社は、業務遂行を妨げる等の一定の場合には、閲覧・謄写を拒むことができます。従来、株主名簿については、債権者から提出を求めることは殆どありませんでした。しかし、例えば、総株主の同意により、株主総会決議の省略がなされた場合は、株主が一人でも欠ければ決議の効力が生じないことから、株主全員の同意書にあわせて、株主名簿を確認する必要が生じます。
(ⅴ)取締役会議事録
【取締役会が開催される場合】
株主総会議事録と異なり、取締役・監査役の署名が法律上の要件となりますので、一応、適法に作成されたとの推定が働きます。
【取締役会が省略される場合】
新会社法により、定款に規定すれば、取締役会の書面決議が認められるようになります。取締役会が省略される場合の要件は、<1>定款への記載<2>提案内容に対する取締役全員の同意<3>業務監査権限を有する監査役が異議を述べないことの3点です。
定款への記載については、定款の写しを入手すること、取締役全員の同意については、登記事項証明を徴求して、取締役の人数と氏名を確認し同意書で確認することになります。これに対し、監査役の異議については、書類上の確認は難しいと考えられます。
尚、書面決議の場合も議事録は作成されますが、実際には開催されていない以上、取締役、監査役の署名はなく、作成した取締役の氏名のみであることに留意する必要があります。
(ⅵ)会計参与を置いている会社との取引
会計参与を通じて、以下の情報収集ができます。
(1)会計参与報告の作成
会計参与は、会計参与報告を作成しなければなりません。会計参与報告は、債権者及び株主に対する情報提供を目的とするものです。
(2)計算書類等の備置及び開示
会計参与は、5年間分の計算書類とその付属明細書、5年間分の会計参与報告書を、会計参与が定めた場所に、備え置かなければなりません。設置場所は、株主・債権者に知らせるため登記事項となり、登記に記載された場所(通常は、会計参与の会計事務所)で計算書類を見ることができます。尚、閲覧対象者は既存の債権者に限られます。