財務戦略と新会社法の活用
財務戦略に及ぼす影響とその活用に関して、費用削減、配当政策、資金調達方法の確保、会計参与の4点について説明致します。
費用削減
資金調達や組織再編に係わる事務合理化により、以下のコストが削減されます。
ⅰ)株券不発行による経費削減新会社法においては、株券不発行が原則(定款で定めている場合のみ株券を発行することができる)となりますので、発行コストを削減することができます。
ⅱ)社債券不発行による経費削減社債発行において、社債券を発行しないことが可能となりますので、発行コストを削減することができます。
ⅲ)組織再編による株主総会経費削減合併・営業譲渡等における株主総会承認を不要とする範囲が拡大されるため、低コストで、組織再編を行うことができます。
非公開会社(譲渡制限株式会社)においては、数は定款で定めれば最大10年まで延長可能となります。すなわち、自社の組織やグループ子会社の機関設計をスリム化して、以下の人件費・会議費等の経費削減を図ることができます。
ⅰ)取締役・監査役の人数を減らすことで、報酬等を削減すること
ⅱ)取締役会を置かないことで、作成・保存コストを削減すること
ⅲ)取締役会を書面決議とすることで、取締役会の開催費用を削減すること
ⅳ)役員の任期延長により登記費用を削減すること
配当政策
【配当手続】
現行商法では、株主に対する配当は、利益配当と、営業年度を1年とする会社に認められる中間配当の計2回しか認められません。
新会社法では、配当の回数制限が撤廃されますので、分配可能額の範囲内において、定時株主総会のみならず臨時株主総会決議により、配当が可能となります。
新会社法において、廃止となりますが、一定の純資産を確保する必要から、純資産が場合は、配当は認められません。
【現物配当】
配当の対象となる財産については金銭以外に、現物(子会社株式等)で行う現物配当が認められます。
【取締役会の決議による配当】
取締役会の決議による配当以下の要件を満たす会社については、株主総会の決議に代え、取締役会の決議により剰余金の配当ができますので、いつでも配当が可能となります。
「剰余金の配当を取締役会の決議で実施できる為の要件」
イ.取締役会を設置していること
ロ.会計監査人を設置していること
ハ.取締役の任期が1年であること
二.委員会等設置会社以外の株式会社の場合は、監査役会を設置していること
ホ.最終事業年度の計算書類が適法であること
へ.営業報告書に剰余金処分の理由その他法務省令に定める事項を記載していること
資金調達方法の確保
【社債の発行の緩和】
現行商法では、有限会社は、社債発行が認められていません。新会社法では、有限会社と株式会社が一体となり、取締役会を設置しない会社を含めて、すべての会社に社債の発行が認められることになります。
現行商法では、社債を発行する場合においては取締役会の決議を要するものとされています。新会社法では、償還金額・利率の上限・発行価額を取締役会で定めれば、事項を代表取締役に委任することができますので、機動的な発行が可能となります。
【譲渡制限株式の発行】
現行商法では、一部の株式のみに譲渡制限を設けることができるか否かについて明確な規定がありませんが、新会社法では、定款により一部の株式のみを対象として、譲渡制限を設けることができます(108条1項4号)。これにより、会社が、譲渡制限付優先株式を発行することや、株式公開を予定している譲渡制限株式会社が、譲渡制限のない無議決権株式を発行することにより、柔軟に資金調達を行うことが可能となります。
【新株発行手続に関する改正】
新株発行手続に関する改正非公開会社(株式譲渡制限会社)における新株発行手続きについて、改正がなされています。
ⅰ)第三者割当増資手続
現行商法では、株式譲渡制限会社が第三者割当増資を行う場合には、株主総会の特別決議が必要とされています。発行価額による第三者割当も株主総会の特別決議を必要としています。
新会社法では、第三者割当増資と有利発行決議を化して、株主総会では発行株式数の上限及び最低発行価額のみを決議し、具体的な内容は取締役会(取締役会設置がない場合は、取締役)が決定すればよいことになりました。
ⅱ)株主割当増資手続
株主割当増資は、現行商法では、定款に定めなくても取締役会限りで発行できますが、新会社法では、株主にとって増資に応じることは経済的負担を伴い、出資に応じられない場合には持分割合が維持できないデメリットがありますので、株主総会の決議が必要となり、発行手続きが厳格になります。
取締役会(取締役会設置がない場合は、取締役)で発行したい場合には、定款で定めることも可能です。
会計参与の導入
新会社法では、監査役を置かないことも認められますが、監査役を設置しない会社では、計算書類は取締役が作成するにとどまり、計算書類の信頼性が確保できません。計算書類の信頼性を高めるために、取締役と共同して計算書類を作成するために会計参与の設置が認められました。
株式会社は、規模・機関設計を問わず、定款で定めることにより、任意に会計参与を設置することができます。会計参与は、株主総会で選任され、その資格は、公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)に限られ、任期・報酬は、取締役と規定に従います。計算書類を会社とは義務が株主総会における説明義務を負い、会社・第三者に対しては、社外取締役と責任を負います。
会計参与を導入することにより、特に小規模な会社では、金融機関等に正確に業績説明を行うことや、粉飾決算の可能性の低い会社であることをアピールすることにより、円滑な資金調達が容易になる財務の信頼性を向上することが可能となります。