中小企業のための組合制度
中小企業が創業・新事業展開・経営革新を図るためには、技術・情報・人材など不足する経営資源の相互補完を図る。
Contents
組合制度の概要
中小企業が、創業・新事業展開・経営革新を図るためには、技術・情報・人材などお互いの不足する経営資源の相互補完を図ることが重要です。
中小企業組合制度は、中小規模の事業者、勤労者などが、組織化し、相互扶助の精神に基づき、協同して事業に取り組むことによって、これまでも多くの中小企業者のさまざまな「前向き」の努力を支え、かつ、自主性のある中小企業を育成する制度として活用され、共同購入事業、共同生産・加工事業、共同販売事業、共同金融事業など各種の共同事業を活発に実施し、実績を上げてきました。
最近ではスケールメリットを追及する事業とともに、異業種の連携による新事業開拓や共同受注・販売、研究開発などソフト面での共同化を図る事業が増えています。
不足する経営資源を他の企業との緩やかなネットワークによって補完するケースが増えています。ネットワークを発展させて研究開発・情報化・環境リサイクル・介護福祉・物流効率化・電商取引の推進などにかかわる組合の設立やSOHO 事業者、主婦、高齢者などが集まり自ら働く場とする企業組合や、地域振興に直結した事業を行う組合の設立も多くみられます。
会社への組織変更がスムーズにできるようになったことから、より一層創業、新事業展開が図られることが期待されます(本リポートでは、その詳細については割愛しますが、創業・共同事業の促進を図る目的で、民法組合の特例として「有限責任事業組合(LLP)」制度が創設され、2005年8 月より施行されています。この制度も中小企業の共同事業等において、現在、広がりをみせつつあります)。
主な中小企業組合の概要
【事業協同組合】
中小企業者が、新事業分野・市場開拓、共同生産・加工・販売などの事業を共同で行うことにより、事業者の新事業展開、経営革新、経営効率化などを図るための組合です。組合は組合員の事業を支援・助成するためのものならばほとんどの分野の事業が実施できます。
最近では、異業種連携による経営資源の相互補完により、新事業展開を目指すものが増えています。
【企業組合】
企業組合は、個人事業者や勤労者などが4人以上集まり、個々の資本と労働を組合に集中して、組合の事業に従事し、組合自体が一つの企業体と事業活動を行う組合です。ほかの中小企業組合と異なり、事業者に限らず勤労者や主婦、学生なども組合員として加入することがで事業が限定されないことから、小規模な事業者が経営規模の適正化を図る場合や安定した自らの働く場を確保するのに適しています。
企業組合は、組合員が働くという特色をもっており、そのため組合員に対し組合の事業に従事する義務が課せられています。原則として組合員の2分の1以上が組合の事業に従事しなければなりません。組合の事業に従事する者の3分の1 以上は組合員であることが必要です。組合員は従来個人に限られていましたが、組合事業をサポートする法人なども加入できることとなりました。そのため、企業組合は、法人などからの出資を通じて、充実や経営能力の向上を図ることが可能となります。
最近では、企業をリタイヤした人材や主婦、高齢者、SOHO 事業者などが自らの経験、ノウハウなどを生かして、働く場をつくろうとケースが増えており、福祉介護、託児所開設(保母・看護婦の経験を生かした創業)、地元特産品の開発、ソフトウェア開発、インターネットを活用したビジネスなどさまざまな分野での創業に活用されています。
【協業組合】
協業組合とは、組合員になろうとする中小企業者が、従来から営んで事業を統合し、事業規模の適正化、技術水準の向上、設備や経営の近代化及び合理化を図り、生産・販売能力の向上を図ろうとする組合です。
協業組合の形態には組合員の事業の一部分を統合する一部協業と事業の全部を統合する全部協業があります。場合も組合員は事業者でなければならず、組合に統合した事業については原則として組合員の事業として行うことができなくなります。
この組合の特色として出資額に応じて議決権に差を設けることや新規の加入を制限することもできます。出資額についても組合員1 人で出資総口数の50 %未満まで持つこともできます。組合に加入できる者は原則としては中小企業者に限られていますが、定款に定めれば組合員総数の4分の1以内まで大企業者を加入させることができます。
古い生産設備を廃棄し、新鋭の設備を共同で導入することにより生産工程を協業化するケース、原材料の仕入れや販売部門を効率化するため数社で協業化するケース、部品加工業者と完成品メーカーによる一貫生産などに活用されています。
信用協同組合および協業組合において減少傾向がみられますが、組合数の推移は、ほぼ横ばいとみることができるでしょう。
組合活動の展開事例
以下では、全国中小企業団体中央会のホームページで「先進組合情報」として掲載されている組合事例を紹介しています。
【○○工業協同組合の場合】
①従来の陶磁器食器のデザインを払しょくしたざん新なデザインを開発し、組合の共同事業として世界に通じるブランド、ARITA NANAKURA を完成させた。
②生活様式の変化や消費者ニーズの多様化等に対応した新たな陶磁器の価値を創造しなければ、生き残れないという認識から事業に取り組むこととなった。
③平成14年度に地場産業活性化事業に取り組み、組合独自の統一ブランド商品の開発を行った。
④取引先候補として20社が名乗りをおり、組合で検討している最中である。
【○○協同組合の場合】
①高度化する顧客の物流ニーズに対応するため、組合の有志で新会社を設立し共同物流事業を実施。
②組合が共同物流システムを構築することにより、ローコストで物流サービスを実現することを目指した。
③設備は、組合の遊休資産を活用し、モデル事業で情報システム等も開発している。
④組合事務局が中心と事業を推進したことにより、組合の重要性が認識され、求心力も高まった。
【○○工業組合の場合】
①ライバル同士の枠を越えて、各組合員の得意と銘菓を詰め合わせた組合独自の商品を組合のホームページを利用しネットで販売。
②菓子店で歳暮・中元などの贈答用の菓子の売上が落ち込み、組合としても売上を増加させるための何らかの対策を講じる必要があった。
③相乗効果により販路拡大につながることから、組合のホームページを利用しネットで販売することとなった。詰め合わせを作るに当たり、13 社から応募があったため、組合が審査し絞り込み、最終的には「落花生」「和風」「洋風」など詰め合わせを完成させた。④組合員の製品を詰め合わせたセット商品を販売したことにより、組合員が相互に刺激を受け、商品の質が向上した。
組合から会社へ組織変更
近年、異業種連携の組合が共同研究開発の成果を事業化し、これを新たな事業として会社形態で成長・発展を目指すケースがみられます。事業協同組合の共同経済事業が発展し、組合員以外との取引や組合員以外からの資本調達を図りつつ会社形態による成長・発展を目指すケースもみられます。
組合制度、会社制度のそれぞれの特性を踏まえ、多様な連携組織形態を選択し、柔軟な活動が可能となるように、事業協同組合、企業組合、協業組合から株式会社または有限会社(※)に組織変更ができるようになりました。
これにより、組合に蓄積された資源・資産をそのまま会社に移行し、事業を休止することなく有効に活用することができます。
最低資本金の制約がなく、税制面などの支援策もある組合を活用して創業し、事業実績が上がった段階で、会社組織の活用により事業のより大きな成長を志向する道が開けています(なお、新会社法では、最低資本金規制が撤廃されるため、最低資本金の制約がないという点は大きなメリットではなくなります)。
中小企業にとって、会社制度とは異なる組合制度の特性をより一層活用することができるとともに、組合事業の発展段階に応じて柔軟な組織変更が可能になっています。
(※)会社法の施行により、有限会社法が廃止され、新規に有限会社を設立することはできなくなります。従って、会社法施行後の組織変更においては、有限会社を選択することはできません。
企業連携組織に対する補助制度
全国中小企業団体中央会では、組合などの中小企業連携組織に対する下記の補助事業について、その実施組合などの募集を行っています(募集期間内に応募が必要)。
<募集する補助事業>
中小企業活路開拓調査・実現化事業のうち
1 .組合等活路開拓調査研究事業
中小企業者が変化に対応するため、新たな活路の開拓等、単独では発展に寄与するテーマ等について、組合等がこれを改善するための取り組みを共同で行う事業に対し支援を行います。
2 .組合等情報ネットワークシステム等開発事業
組合等を情報ネットワークシステムの構築、組合員向け業務用アプリケーションシステムの開発及び事業に対し支援を行います。
3 .組合等自主研修事業
組合等が、その組合員(会員)等を対象に研修を行うことにより、人材養成を促進するために実施する事業に対し支援を行います。
4 .組合等W e b 構築支援事業
Webサイトを構築し、組合情報、組合員企業情報等を広く発信し、業界の活性化及び個別企業の新たなビジネスチャンスの創出を図る事業に対し支援を行います。